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BSE検査規制見直し

 
 食品安全委員会プリオン専門調査会において、BSE(牛海綿状脳症)検査の対象を20ヶ月齢から30ヶ月齢に変更した場合のリスクを比較する食品健康影響評価について、審議を行っている。これは厚生労働省が、BSE感染牛の全頭検査を見直す方針を固め、作業を急いでいる流れの一環だ。全頭検査は日本でBSEの感染牛が見つかった2001年秋から始まり、これまで10年も続いてきた。欧米をはじめ世界的には効果への疑問が強い全頭検査を日本ではなぜ続けてきたのか。

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 BSEは、牛の脳に異常プリオンがたまって、脳がスポンジ状になってしまう病気である。厚労省は国内で感染牛が確認された直後から、出荷前のすべての牛をチェックし、感染が確定した牛は市場に出さないよう検査態勢を整えた。

 しかし、生後20カ月以下では感染した牛が見つからなかったため、2005年8月には、検査対象を「生後21カ月以上」と変更。ところが、その後も補助金を出したため、全頭検査は継続され、補助を打ち切った2008年7月末以降も、全国の都道府県が独自予算を出し、現在まで続けられている。

 全頭検査の効果が大きければ問題はないが、効果に対する否定的な見方は強い。BSE感染は、牛や羊などの骨や内臓を砕いた飼料「肉骨粉」を牛が食べることが主因とされている。日本の感染牛もこれが原因だったため、「感染牛発見当初は、全頭検査も意味があった」とされる。

 ただし、その後、肉骨粉を飼料として与えないことが徹底された結果、10年もたてば、新たに肉骨粉で飼育された牛はほとんどいなくなっている。また、異常プリオンがたまる牛の脳や脊髄などの危険部位を取り除く対策も進められてきた。

 全頭検査は、獣医師らが牛の脳の一部を取り出し、試薬を加えてBSEの原因である異常プリオンがあるかどうかを調べる。しかし異常プリオンは脳の中にだけあるわけではなく、体内に吸収されると移動し、脊髄や目、腸の一部などにもあると確認されている。

 さらに、実際には牛が高齢になればなるほど脳に集まる傾向にあるといい、「若い牛の脳を検査しても、感染牛の一部が見つかるにすぎない」というのが多くの専門家の見方だ。感染牛が大量確認された欧米で全頭検査が実施されていないのは、こうした科学的論拠によっている。

 そんな全頭検査が日本で10年も続いてきたのは、科学的論拠ではなく、政治的判断や感情論が大きな背景にあったといえる。全頭検査に踏み切った当時の厚労相は「風評被害があり、(全頭検査をしなければ)国民の安心が得られない」と説明している。

 全頭検査では約200億円の税金が使われた。国民の食の安全を保つには何が本当に必要なのか、BSEの全頭検査問題が「安全」と「安心」のもつれた糸を解きほぐす糸口になるか、注目されれている。

牛海綿状脳症(BSE)について(厚生労働省HP)