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肉を食べる人は長生きする

先般開催された日本食肉流通センター主催の「ちくさんフードフェア」で「肉を食べる人は長生きする」の著者・柴田博氏が講演した。柴田氏は医学的見地から肉が長寿に果たす役割を解説。厚労省の平成23年国民健康・栄養調査では10年前と比べ、野菜類・果物類、魚介類の摂取量は減少し、肉類の摂取量は増加した結果が得られている。肉を食べる人が増える中、肉にはどのような効能があるのか。講演要旨を紹介する。

(食肉通信 2013年11月12日号より抜粋)

■ 肉と魚の割合は1対1が望ましい

 肉と魚の食べる割合は1対1が望ましい。しかし70歳以上の方は魚2に対して肉1となっている。元気のよい高齢者を調べると、肉と魚は1対1の方が多い。私が東京都健康長寿医療センターに赴任したとき、100歳の方を調査した。現在、日本人の1日の摂取カロリーに占めるタンパク質の割合は15%。当時は14.6%だった。しかし100歳の方を調べると16%を超えていいた。タンパク質の割合が若い人よりも高い。
 さらに驚いたのは、タンパク質の中の動物性たんぱく質が高かったことだ。この割合が現在の日本人は50.3%だが、当時の日本人は50%に届いていなかった。ところが100歳の方は60%に近かった。長寿者の特徴は高たんぱく質な動物性食品を取っているということがわかってきた。
 国の意識調査でも長寿者が高タンパク質を取っている結果が得られた。大豆を1日に2回食べる人は、100歳の人は若い人の倍以上だった。野菜も十分にとっている。これらにより、学問的にも粗食はダメと分かってきた。


学問的にも粗食は駄目


■日本人はおいしいものを体に良いと考えることが苦手

日本人は粗食好き。食肉総合消費センターでは、農学者、畜産関係、医者が協力し、さまざまな研究をしている。その研究の中で20年前、おいしさを味わうことで精神の生理活性を高め、免疫力を上げるということが指摘された。このとき初めて、おいしいことは良いことだと分かった。
 それ以前に日本人はどのように考えていたか。それは医食同源、中国の薬食同源、良薬口に苦しといった言葉のように、薬と食べ物が同じと考えていた。薬が苦い方が体に良いということになる。それでまずいものを我慢して食べることが滋養だと考える。長い間、そういった粗食長寿説が信奉されてきた。
 粗食長寿説を前述の研究が壊して今日にいたるが、わずか4半世紀しか経っていない。日本人はおいしいものが体に良いと考えることが苦手だ。

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|  食肉を取らないマイナス点 |
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|  〇アミノ酸構成が劣化する |
| 〇鉄が不足する |
| 〇一価の不飽和脂肪酸が不足する |
| 〇神経伝達物質セロトニンの不足 |
| 〇アナンダマイド、カルチニンなどの |
| 生理活性物質の不足 |
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■食の欧米化での肉の摂取が増え平均寿命が延びた

 昭和40年からのコメの摂取量が減少してくる。合せて塩も減る。変わって、肉類、乳製品が増えていくる。これが食生活の欧米化といわれるもの。実は日本人はカロリーが100年間増えていない。ひいては全部の食品が増えていないということ。いわゆる欧米化は間違いない。
 日本人は昭和30年代、欧米に平均寿命が届かなかった。昭和40年から、食生活の欧米化とともに脳卒中が減ってきた。昭和56年には脳卒中が、がんの死亡率を下回るまでに減少した。この時点が平均寿命のトップといえる。
 一方で、欧米諸国はなぜ日本に平均寿命を抜かれたのか。欧米諸国は脳卒中が日本より早く減ったが、肉は日本の3倍摂取したため栄養過剰になり、心臓病が死因の主なものとなった。日本の場合、程よいバランスだったため心臓病も脳卒中も減り、平均寿命が高い国になった。

■なぜ動物性タンパク質が体に良いのか

 食品にはアミノ酸スコア(アミノ酸がどのくらい人間に近いかを示した指標)がある。人間の体を構成しているタンパク質は数が多いが、たった20種類のアミノ酸で吸収される。20種類のうち、9種類は自分で作ることができず、外から取らなければならない。それが必須アミノ酸と呼ばれるものだ。
 必須アミノ酸は人間の体に近い構成になっており、人間の体に有効に使われ、余計な処理をしなくてもよい。余計なアミノ酸を処理することで人間は老化し、がんにもなる。アミノ酸スコアは肉、牛乳、卵、魚が100.畑の牛肉といわれる大豆は80.米は60。小麦は44となっている。
 アミノ酸スコアの高い食品を取らずに運動だけやると筋肉は細くなる。アミノ酸を取って運動すると筋肉が太くなる。体育教室などで指摘される、運動すれば太くなるというのは間違い。たとえば悪い栄養状態だとマラソンランナーは疲労骨折する。


アルブミンが重要


■肉に含まれるたんぱく質「アルブミン」の比率が低いほど死亡率が高い

 肺炎は高齢者の死亡率の3割を占める。長寿になったら肺炎で亡くなる率が高まる。肉に含まれるたんぱく質の1種「アルブミン」の低い人ほど生存率が悪い。人生も終わりのころになると自然に死亡が減り、体重も減る。これが老化。そういう時期になると、血液の栄養成分も落ちてくる。同じ食事をしても減る。だからどうやってもアルブミンも下がってくる。
 アルブミンというのは寿命にももちろん影響するが、入院患者や寝たきりの方にも影響する。いま問題なのは、若い人。若い人の低栄養は、すぐに寿命に表れないので心配だ。

■肉はダイエット食品、カルニチンで脂肪燃焼

 カルニチンはスタミナ物質。これは必須アミノ酸からつくられる。人間の脂肪を燃やすために、カルニチンがないとミトコンドリアに入っていけない。 
 カルニチンは脂肪を燃焼するために必要。肉を食べると太るということを言う人がいるが、ドンでもない話だ。肉は最も脂肪を燃焼する物質である。したがって運動するとき、ブドウ糖だけではく、脂肪も燃焼する力を持っている。だからアスリートが肉を好む。
 実験でも、ミルクのカゼインと肉のタンパク質どっちが長持ちするか試したところ肉の方が上だった。ボクサーは減量時に最後に肉の一切れを食べる。肉というのはダイエット物質。そう認識していく必要がある。肉を食べると長生きできると知れば、ますます肉を食べる人が増えることだろう。