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"化ける牛"の謎とは

実は同じ肉中の脂肪量

 牛の枝肉を下見している際に、目利きが「この牛は化ける」などということがある。格付けされた時点ではBMSNo.4~6程度で3~4等級クラスの枝肉が、買い受けてから2~3日寝かした後にはサシがびっしり浮き出て、一気に5等級に化けてしまうのだという。
 
 このことを米沢牛生産者に指摘された山形県農業総合研究センター畜産試験場では、和牛のロースに含まれる脂肪含有量を分析。それによると、3等級の牛肉でも5等級の牛と同じ脂肪含量のものがいることが判明し、3等級の牛は5等級だった牛に比べ脂の融点がずっと低かった。

 これは何を意味しているのか。
 「純粋但馬に代表されるオレイン酸が豊富な牛肉は、皮下脂肪だけでなく、筋肉の中にある脂も融点がとても低い。このため、と畜後1~2日ほどの冷却では脂が固まりにくいため表面に脂が浮き上がらず、サシとして認識することが難しいことから、肉質等級が低く格付けされてしまう
 「これに対し、脂の融点の高い牛は脂が白く固まるため、びっしりとしたサシが出やすい」(元山形県農業総合研究センター畜産試験場長・小林氏)というわけだ。

つまり、目利きがいう「化ける牛肉」とは、肉に含まれる脂の量は5等級クラスと同等でも、脂肪の融点が低いためにサシの出方が弱く、肉質等級が低く格付けされる枝肉を指している。そうした枝肉は目利きに好まれ人気があるが、低い等級の相場がベースとなった値段で取引されるため、生産農家にとってはジレンマでもある。

食肉通信 平成22年8月3日号より抜粋