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和牛のおいしさ オレイン酸多い但馬系

すっと溶ける上質脂

 食感には肉の軟らかさが、多汁性には脂肪の質、いわゆるオレイン酸(不飽和脂肪酸)が大きくかかわる。脂の融点の低さは和牛全般にいえる特長であり、オレイン酸が多い牛肉ほど脂が軟らかく滑らか。和牛肉のおいしさにおける、オレイン酸の果たす役割は高い。また、その中でも但馬系や長期肥育された和牛はオレイン酸をより豊富に含み、目利きにも高く評価されている。

 この脂肪は三つの脂肪酸が結合して構成される。脂肪酸には飽和脂肪酸(S)と1価不飽和脂肪酸(M)および多価不飽和脂肪酸があり、牛の脂肪はSとMの組み合わせで性質が決まるが、とりわけ和牛では脂の食感がそれによって決まる。

 飽和脂肪酸だけでできている「S S S」はいわゆる飽和中性脂肪といわれ、融点が61.2度℃と非常に高い。ロウのように白く固まるため、こんな中性脂肪の多い肉では、いつまでたっても口の中で溶けるわけがなく、まずいと感じてしまう。

 これに対して不飽和脂肪酸だけの「M M M」は融点がマイナス10度℃。冷蔵庫でも固まらない脂であり、このタイプの脂が多ければ融点が低く滑らかな肉になる。ただ、MMMを多く含みすぎる肉は、と畜後に枝肉を冷却している間に脂がべたべたと床に流れ落ちてしまったり、調理の際に脂が流れ出てしまうため、一概に理想的な肉ともいえないのだそうだ。

 ある程度の温度で溶ける脂の硬さが求められ、一般に理想的なのは不飽和脂肪酸を多く含んだ「S M M」や「S S M」といわれている。目利きが「粘りや練りがある脂がよい」というのも納得できる。

 そして、脂肪に含まれるオレイン酸の多さは遺伝(品種、性別、血統)によって大きく左右され、肥育期間の長さも関係する。一般に、増体系の牛では飽和脂肪酸SSSが増加する傾向がみられ、純粋但馬牛には不飽和脂肪酸MMMが多い。

 和牛はもともとオレイン酸を多くつくり出す遺伝子をもち、その遺伝子がとくに強く発現する但馬系は肉の脂が軟らくなる。和牛と異なりホルスタインにはこの遺伝子の活性が低いため、肥育技術でサシを入れることができても軟らかい脂には仕上がらない。

食肉通信 平成22年8月3日号より抜粋