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レンダリングシステム:油脂製品とは


ビーフオイル・ポークオイルは美味しい


①動物油より植物油のほうが身体に良いと誤解されてきた経緯
1960年代のアメリカは世界一の繁栄をほこっていた。その陰で偏った食生活からなる肥満・冠動脈心臓病が多発、社会問題となり、この改善を図る目的でアメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会が結成され、1977年調査の結果がMcGovern Report(通称:マクガバンレポート)としてまとめられた。

それによるとまず、肉食及び動物油脂の過剰摂取が肥満・冠動脈心臓病を引き起こしていると発表され、全米で健康志向が高まりだした。マクガバンレポートは健康問題に関心の高い日本でも注目され、「植物油は善玉」「動物油は悪玉」と直訳され、これに基づいた食事指導がされるようになった。その結果「植物油は健康にいい」との誤解が定着してしまったのです。

その後、日本でも調査を行いその結果、肉食を米国人に比べ約四分の一しか食べない日本人は、長期摂取実験においてもそのようなことはおこらず、冠動脈心臓病の原因も食べ過ぎ、太り過ぎ、運動不足であり、世間一般で広まった動物油脂の採り過ぎが原因ではないこともわかったが、誤った解釈が今日にいたるまで続いているのです。

②食べておいしい
例えば、動物油脂で揚げたフライドポテトやコロッケは植物油脂で揚げたものと比べ、香ばしくカリッとしておいしいですよね。大手ファーストフード店では昔100%ビーフオイルを使用してフライドポテトを揚げていましたが、現在はその比率を50%近くまで下げています。「価格は安くなったものの、味は落ちている。」と感じている人も多いことでしょう。すき焼きの始めに鍋にひくのは'ケンネン'と呼ばれる脂身です。さしが入った肉が「うまい!」と言われるのは、加熱調理した際に肉全体に脂肪が溶けて柔らかい食感となり、さらには肉汁が染み出ていわゆるジューシーな食感に加え、脂肪の香りや風味もおいしく感じられ皆さんに喜ばれています。

③人生が楽しくなる
日本人の平均寿命は、男性で約79歳、女性で約86歳です(平成20年)。今から約100 年前の明治時代の日本人の平均寿命は約40歳と言われています。つまり、日本人はこの100年に寿命が2倍になったわけです。この理由をもう少し詳しく見てみると、その大半は戦後(昭和21年)以降で達成されています。平均寿命が大幅に伸びた原因としては、それまでの穀類・魚中心の食生活から肉も食べる食生活に変わったからと考えられます。すなわち穀類・魚に偏らない動物性たんぱく質食品と油脂類が豊富に食べられるようになったことによって平均寿命が飛躍的に伸びたと言えます。このような傾向は、70歳高齢者の10年間の死亡率と食習慣の関係を扱った研究でも認められています。寿命を伸ばす、老化スピードを遅らせるためには、肉、卵、牛乳、そして油脂類も食べ続けることが大切です。

また肉、牛乳、油脂をよく食べる食事生活は寝たきり予防に効果があるという研究結果も出ています。人生を長くそして楽しくするためにも、肉、牛乳などの動物性たんぱく質食品と油脂類の摂取が大切なのです。つまり、長寿(命の量)寝たきり予防(命の質)の食生活のポイントは共通しているのです。

④食事もバランスが大事
生活習慣病の一次予防の観点から、重要な栄養素(飽和脂肪酸)であるが摂取目標量が "2010年版日本人の食事摂取基準"に定められています。過剰摂取は心筋梗塞・糖尿病・肥満等の生活習慣病の原因になり、摂取不足(飽和脂肪酸10g/日以下)は脳出血罹患率の増加が認められるので、一日の摂取エネルギーの4.5~7.0%(=12~18g)が目標量として指定されています。また一日の脂肪摂取量は、51~64gを目標量としています。

最新の人臨床治験の結果に基づき、厚生労働省は今年から植物油より動物油を多く摂取するよう食事指導を推奨しています。これは近年の植物性油脂偏重の流れを受け、油脂から摂取するエネルギー・栄養素を動物性油脂からもバランス良く採ろうとする動きによるものだと思われます。良薬も飲みすぎたら悪薬になるように、

摂取不足を防ぐため過剰による健康障害を防ぐため生活習慣病の一次予防に資するため

という厚生労働省の指標に準じ、どちらの油脂・脂肪酸が健康に良いかというのではなく、バランス良くそれらを摂取することが健康維持には大事です。

参考
◆日油商事株式会社 食品営業部 技師長 日比野英彦 博士 
脂質栄養学 第17巻、第1号(2008) 「油脂悪玉説の原点を検証する」
  --政治学及び脂質栄養学よりみた"油脂と健康"に関する一考察--
肉も食べ続ける食生活の大切さ 地域保健研究グループ 熊谷修
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2010年版)」
農林水産省ホームページ